🎨【総務担当者奮闘記】「有給ゼロで骨折…」後輩からのSOS!
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つい先日、私の社会人生活で一番心臓が止まりそうになった出来事がありました。
いつものようにコーヒーを淹れて、ふと引き出しのクッキーに目が止まりました。「あ、これ、賞味期限昨日だったな…でもまだいけるか」なんて考えていたら、会社の外線電話がけたたましく鳴り響いたんです。
「Aです!」「…ごめんなさい、実は休みの日に駅の階段で転んで、足を骨折しちゃいました」
声の主は、若手社員のCさん。私は一瞬、頭の中が真っ白になりました。骨折?お給料はどうなるの?先輩はたまたま外出中。とりあえず、スマホ片手に震える手でGoogle先生に「社員
骨折 休む」と入力。会社の就業規則や、先輩が残してくれたマニュアルを引っ張り出してみたものの、頭には全然入ってこない。
すると、Cさんから追い打ちのメッセージが。「A子さん、有給もう残ってないので、どうしたらいいでしょうか…?」
「ええっ、有給がない!?」
思わず声が出ました。「何かあったら有給で処理」と言う、まさかの必勝パターン崩壊。今迄のパターンでは対応できない、本当に「私にはどうしようもない」状況。Cさんからの電話を切りしばらく放心状態でおりました。でも、その時、ふと入社時に先輩から聞いた言葉を思い出しました。
「困った時は、制度をちゃんと知ることが社員さんを安心させる一番の近道だからね。」
私はもう一度、震える手で過去の申請書類を広げました。すると、待機期間の説明の横に、先輩の手書きで「有給なくても大丈夫!無給扱いにして、傷病手当金でカバー!」とメモがしてあるのを発見。その言葉を見た瞬間、目の前の分厚い霧が、サーッと晴れていくような感覚がしました。そうだ、傷病手当金…!聞いたことはある。でも、詳しくは知らない…!
気づけば私は、会社の椅子から飛び上がり、協会けんぽのホームページにかじりついていました。そしてその日の帰り道、まるで何かに取り憑かれたかのように大型書店に駆け込み、「社会保険」「健康保険給付」と書かれた本を数冊、鷲掴みにしてレジへと向かいました。私の、一夜漬けの猛勉強が始まったのです。
翌日のお昼前。少し寝不足の頭を抱えながらも、昨日とは別人レベルの知識を詰め込んだ私は、自信を持ってCさんに電話をかけました。
「Cさん、その後、体の具合はどう?焦らなくて大丈夫だからね!うちの会社は休職制度があるし、Cさんが心配している有給がなくても、『傷病手当金』っていう制度でしっかりサポートできるから。ゆっくり休んで、治療に専念してね」
電話の向こうで、Cさんが少し戸惑っているのが伝わってきます。
「あの…傷病手当金って…なんですか?詳しく教えてもらえますか?」
(よし、来た!)私は心の中でガッツポーズをしました。昨日、マーカーで線を引いた知識を、今こそ披露する時!
「Cさん、傷病手当金とはね、いくつかの条件が合えば、公的な健康保険からお給料の代わりになる給付金が出る、すごくありがたい制度なんだ。大事な条件は4つあって…」私は、まるでベテラン総務のように、淀みなく説明を始めました。
「(1)業務外の事由による病気やケガであること。 Cさんの場合は、お休みの日の事故だからこれに当てはまるね」
「(2)働くことができない状態であること。
これは、お医者さんが証明してくれるから大丈夫」
「(3)連続する3日間を含み4日以上仕事を休んでいること。 この最初の3日間を『待機期間』って言うんだけど、ここがポイント!この3日間は有給を使ってもいいし、Cさんみたいに有給がなければ無給で休んでもOK。だから有給がなくても申請できるんだ」
「(4)そして、その休んだ期間について給与の支払いがないこと。
これらを満たせば、お給料のおおよそ3分の2が支給されるんだよ」
さらに、今後の手続きについても、完璧なフローチャートを脳内に描きながら説明します。
「まず、Cさんから会社へ休職届を出してもらって、そしたら会社から申請書を渡すね。Cさんが自分で書く部分と、病院でお医者さんに書いてもらう部分があるから、それを完成させて会社に戻してほしいんだ。あとは会社が事業主として記入する欄を書いて協会けんぽに提出するから、Cさんは待っているだけでOK。審査が終われば、Cさんの口座に直接振り込まれるから安心して」
一気に説明し終えた私に、電話の向こうのCさんは感嘆の声を漏らしました。
「A子先輩…ありがとうございます!すごい、さすが総務のことはお詳しいんですね!」
(ふふふ…Cさん、私が昨日、閉店間際の書店で参考書と格闘していたことは知らないだろう…)
一夜漬けの知識であることはおくびにも出さず、「任せておいて!」とクールに電話を切った私。社会人になって初めて、自分の仕事に確かな手応えを感じた瞬間でした。
数日後、松葉杖をつきながら、Cさんが照れくさそうに出社してきました。
「A子先輩、この度は本当にありがとうございました!本当に助かりました!」
「ううん、大変だったね。でも、駅の階段でなんて、どうしてまた…」
私がそう尋ねると、Cさんは気まずそうに頭を掻きながら、衝撃の事実を告白しました。「実は…あの時、スマホゲームに夢中になってて…」
聞けば、期間限定の超絶レアアイテムが、ちょうど階段の一番下にポップアップして光って見えたのだとか。それに気を取られ、「今しかない!」と駆け下りようとして、見事に足を踏み外したらしいのです。しかも、転んだ瞬間も「ああッ!俺のアイテムがーッ!」と叫んだらしく、通りがかった人たちに二度見され、ものすごく恥ずかしかったとのこと。
私の半日分の胃痛と、寝不足を伴う猛勉強は、まさかのスマホゲームのせいだったなんて…。
総務の仕事って、本当に奥が深い。社員の人生に寄り添う仕事だとは思っていたけれど、まさかスマホゲームのレアアイテム争奪戦の余波を受ける日が来るとは。Cさんの原因は少しユニークでしたが、誰にでも突然のケガは起こり得ます。そんな時、制度を正しく理解し、社員に寄り添うことが私たち総務の大切な役割なのだと、改めて実感した一件なのでした。